漢法苞徳会 臨床システムの骨子

1)脈診が不得手であっても、効果的に経絡を運用して治療する経絡的治療は可能である。
2)再現性を重んじ、主観的な思い込みに陥る危険性を避けるように配慮工夫した方式である。
3)システム全体を臨床見学者も、臨床記録を見る人達にも見えやすく判りやすくし、また術者が
  これらを第三者に説明できる方式を工夫した。
4)初歩的な基本知識と技術があれば、比較的容易に習得でき、新人から熟練者までシステム全体を
  共有でき、臨床判断の基本も共有できるよう工夫した。

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これらは臨床カンファレンスを可能にするシステムである。それは鍼灸界全体の臨床レベルの向上につながる。

鍼灸治療は、病因・病蔵が判断でき、病位・病性・病態と変動経が把握できれば、経絡を運用した治療が可能である。そのためには的確な病症解析と診断が、第一に重要なことであるのは言うまでもない。そして幅広い治療を可能とするためには、診断はひとつの方法に拘らず病症解析と四診を総合して、多面的に病を捉えるべきであり、病を立体的にイメージすることが先決である。何故ならば、病の体表での反応は多層的であり、単一の反応を表現していることは非常に少ないからである。逆説的に言うならば、ひとつの方法に拘ることは自ずから治療の有効範囲を狭めることになる。

種々の診察項目の五行的所見には、かなりの矛盾が見られるのが普通であり、生来の体質的五行・病態の五行・病因の五行・病蔵の五行・季節の五行などが出現している。実際の病的反応は、多くの場合、多層的である。その所見に基づいて、五行論的に病因と病蔵を判断する。特に運動診は、陽経の反応を主に現している。その上で、病症と経絡的反応から病蔵を決定し、さらに切経によって、主要な反応経絡を確認する。

以上を実現するためには、八木素萌先生の考案したカルテに正確に記入する診察力が必要とされる。